オーラル・フィジオセラピー=自然良能賦活療法
Oral Physiotherapy
ゴールドマン&コーエン著「歯周治療学」にあげられているOral physiotherapyは、一般には口腔衛生指導法と訳されている。
これはブラッシングによるプラークコントロール、フロッシング、クロルヘキシジン等の薬剤による含嗽法などの口腔洗浄を想定している。
口腔疾患の主な原因は口腔常在菌の異常増殖・停滞である。
従ってこのままの解釈では狭義の原因除去処置、すなわちプラークコントロールでしかない。しかし、適正なブラッシングにより、病因性のプラークを完全に除去すると同時に、弱った病変組織に為害性のない程度の擦過刺激を与えることが必要である。
それにより組織の生理代謝を促す賦活性が具備され、それが本来組織に備わっている自然治癒力をひきだすことになる。
しかし、これとてあくまでも歯肉に対してだけ行われる処置であって、他の歯周組織全体を対象としていない。
口腔疾患の根源的な病因は、W.A.プライスの研究でも明らかなように近代文明食のあり方、すなわち火食・軟食・高温食・甘味添加食品・加工食品・インスタント食品などの不完全咀嚼の食習慣にある。
そこで広義の病因除去とは、食習慣の改善や噛み癖の是正等までも含むものでなくてはならない。
食材そのものの吟味、食物の堅さや温度の再検討、噛み方と噛む回数などの適正化が図られることにより、歯肉だけでなく歯根膜・セメント質・歯槽骨に対しても適正な咀嚼圧等の生理的な刺激による組織賦活が実現する。
その意味で「自然良能賦活療法」という訳語を当てたい。こうして口腔局所の病因除去に留まらず、全身的衰弱の原因をも除去して、全身的抵抗力をも高める。
このことがまた口腔諸組織の健康化を促し、再燃再発を防ぐことになる。
このような自然良能賦活療法こそが、現代の文明生活習慣病の根元的治療法であり、疾病の治療回復だけでなく、真の健康への出発点でもある。自然良能賦活療法について/片山自身による概説
永続的に病因を排除し、抵抗力を増強させ、再発防止を行う手段・方法を習慣化し、定着させる生活改善指導の最も効果的な方法の概略を述べる。
要は指導をお説教ではなく、時間を極端に短くし感動的に納得させる方法でなければならない。
さもなければ実行も伴わず、効果も期待できるものではない。
これらの新しい情報に接し、それまでの認識との大きな違いから動機が強化され、また病変の不快から逃れるために病因を除去しようとする欲求によって、危害逃避の本能的衝動が情動的に惹起される。
このチャンスを良導して、適正な含嗽法とブラッシングを指導することから始まる生活改善指導とは、すなわち徹底したプラーク・コントロールと、自然良能を賦活する擦過刺激付与による治療を意味する。
一般にいわれるOral physiotherapyは、局所とりわけ歯肉に対してだけ行われる方法であって、他の歯周組織全体にまで直接作用するとは考えられない。
筆者がここで述べる歯周病変組織に対する自然良能賦活療法は、歯肉だけでなく、周囲組織の歯根膜、セメント質、歯槽骨に対しても作用する。当然、ブラッシング等による病因除去および組織賦活の治療処置と同時並行的に、暫間固定、治療用仮修復、仮義歯などの処置が行われる。
- 病因の認知 :位相差テレビ顕微鏡による歯垢の内容認知
- 歯垢停滞の場所と量の認知:顕示剤を用いての染め出し法による残留歯垢の量と位置の認知
- 病変組織の認知 :歯周ポケットの存在と深さ、歯肉の浮腫、ポケットからの出血・排膿、歯牙の動揺などの状態の認知
筆者は、以上の3方法を臨床ルーチンとして、昭和23年より改善を加えながら実行している。
- 病因の認知 :位相差テレビ顕微鏡による歯垢の内容認知